作図編テキストを使って

2018年11月5日

お客様の声〜高校入試SSシリーズ〜

作図編テキストを使って

当塾では毎夏、高校受験の中3生を対象に夏期合宿を実施しています。

ご多聞にもれず生徒減は当塾も同じで、単独での合宿実施は少々無理があるのですが、幸い長年おつきあいのある塾長先生方との信頼関係の賜物で、夏期勉強合宿を共同で開催するようになって今年で4年目となりました。

ふだんはそれぞれの塾で学んでいる生徒たちが、夏の数日間だけ寝食を共にして受験勉強に集中して取り組む。学力もそれまでの学習の進度もばらばらの生徒が集まっての合宿だけに、学習の基本は「この合宿用に制作した英・数の問題集を期間内にやり終える」というスタイルをとっています。

しかしながら延々と問題集を解くだけの勉強では、集中力の持続する生徒ならいざ知らず、親に尻を叩かれて参加したような生徒では飽きが来てしまいます。そこで時おり変化球や息抜きを入れていくわけですが、その中のひとつに特別講義があります。

この時間だけは一斉授業の形式で、受験生に必要だと思われる箇所を1テーマで1時間半程度行うというものです。過去には数学・相似と三平方の先取り授業、英語・分詞の形容詞的用法、国語・国語のヒアリング問題などをやってきました。

今年は何をするかという企画段階で「数学の作図は1年生で学習し、表面的なことは分かっているつもりになっているが、本質の部分まで教えてもらっていないため、公立入試レベルの作図さえ満足にできない生徒が多い。」という認識で一致し、「作図だったら1時間半くらいでひと通りのことができます」という宮田先生のご意見にも後押しされて作図授業を行うことになりました。作図だけのテキストなど既存のものではないのですが、幸い宮田先生が自塾生のためにお作りになっていた「数学作図そっくり問題」テキストの提供もしていただけることになりました。

さて、いよいよ合宿での作図授業本番です。「垂直二等分線を引きなさい」という問いには多くの生徒が正解できますが、「2点から等しい距離の点の集合をかきなさい」というと何のことやらわからない、という生徒が多いのが実情です。このテキストでは作図の仕方、その理由・意味、何に使えるかがまとめてあり、その後に基本例題が続きます。1年生で習った事項にこんな意味があったのか、こんな時にはこれを使うのか、と生徒たちの納得度は深いように感じました。

垂線についても直線上の点から引くものと外部から引くものにページが分けてあり、それぞれに例題が続くので区別して学習していくことが容易でした。角の二等分線についても同様です。

私がこのテキストで特に気に入ったのは特定の角度(90,60,45,30度など)の作図と平行線の作図です。これらは受験生には必須事項ですが、おそらく中学校の授業では習うことはないように思われます。我々塾人の腕の見せどころと言えますが、数学が専門でない先生では教え漏らしてしまう事項ではないでしょうか。こんなところにも目が行き届いている点に、宮田先生が実際に自分で使うために作られた教材であるということを強く感じました。

作図という作業を伴う学習なので、単に講義を聞いているだけの授業で終わらずに生徒たちが積極的に作業に取り組む時間となりました。これもダレ気味になる午後の時間を引き締める、いい効果を生み出してくれました。

1時間半の授業はあっという間に終わってしまい、基本例題はほとんどの生徒が終了することができました。短い時間ながらもひとつのまとまったことができた、という満足感を多くの生徒が持てたようです。
また、今回のテキストの後半には応用も含む類題が数多く収められています。その後の自由学習の時間に、意欲のある生徒たちはこの類題にも取り組んでいました。実際、他塾の生徒たちから「中村先生!」と名指しで質問されて、行ってみるとこのテキストの類題をやっていたということが多々ありました。今回の特別講義、自分の塾の生徒たちよりも他塾の生徒たちに受けが良かったようで、うれしいような情けないようなちょっと複雑な心境でした。

今回の合宿でのこのテキスト使用はちょっと特別な使用例かもしれません。ただ、通常の授業の中での使用ももちろん可能ですが、むしろ短期講習や特訓授業のような限られた時間の中での使用の方が強いインパクトを残す教材である、という印象を受けました。

当塾の合宿参加者たちには秋以降、類題部分をどう使っているかをアフターフォローしてやるつもりです。

文化外語アカデミー 中村 肇様